メディア掲載


百年住宅にふさわしい熱性能として、私たちは次世代省エネ基準に対応する住宅に比べて1/2(半分)の暖房エネルギーで済む家造りを考えました。断熱材をむやみに厚くするのではなく、窓を工夫し太陽熱を有効に活用しながら、換気の熱損失を回収し、コストアップを極力抑える。これが私たちの提案です。

北海道の風土にあった省エネ手法、太陽熱を上手に利用する。

 ちょっと難しくなりますが、住宅の熱の逃げ方と暖房エネルギーの関係についてお話します。室内が20℃の住宅から逃げる熱は、大きく、床壁天井、窓、換気(すきま風)の三つに分けられます。北海道で建てられる普通の高断熱住宅では、この三つが同じくらいになります。この住宅の室温を20℃に保つためには、暖房が必要です。このエネルギーは、住宅から逃げる熱から生活熱(人間が出す熱と電気ガスなどで出る熱)と窓を通して入る太陽熱を引いた分になります。これはだいたい、逃げる熱の1/3ぐらいです。太陽熱を増やし、換気で逃げる熱を回収するとこれだけで暖房エネルギーが大幅に減少します。太陽が沈んだ夜に、もっとも多くの熱が逃げるのは窓ですから、夜は窓の断熱性能を上げるのが効果的です。こうして足りない分を少し建物の断熱を厚くする。これで暖房エネルギーを半分にできるのです。
 このような考え方で、私たちは、具体的な手法、コスト、施工性などの検討を続けてきました。この手法を住宅に適用したときの、省エネ効果を計算する簡便なプログラムも作り出しました。その結果、コストアップを多くみても百万円以内で納められる目途がつきました。このような住宅の熱損失(Q値)は、床面積あたり1.0W/u℃前後になります。こうした住宅を私たちはQ1.0住宅と名付けました。

新住協会員有志が、Q1.0住宅を実際に建設し公開します。

 Q1.0住宅を、実際に皆さんに見てもらおうと、私たちは昨年の秋からプロジェクトを進めてきました。道内各地に10数棟のQ1.0住宅が完成または建設中です。その住宅を建て主さんの協力で公開します。是非ご来場ください。これらの住宅の理念と、メカニズムについてのセミナーも開催します。皆様の参加をお待ちしています。
 NPO法人 新住協は、この住宅の暖房エネルギーをこの冬測定し、結果を報告したいと思っています。またこの技術は、全くオープンに公開します。北海道の住宅を真の百年住宅に変えていくため、私たちはこれからも活動を続けます。暖房エネルギーをさらに少なくする次の住宅にも取り組みながら、先駆的な家造り技術者集団として、皆さんに広く知って頂けるよう努力していきます。



一足早く、本州で建設したQ1.0住宅。新潟県上越市。南側の大きな窓、断熱戸、ガラスの長いひさし、夏を涼しくするための換気棟などの工夫がされています。

コラム3回目---「これからの北海道の家としてQ1.0を提案します」
コラム2回目---「百年住宅を目指して」
コラム1回目---「新住協ってなに?」

※本コラムは市民セミナー「第二次高断熱住宅運動Q1.0宣言」の実施に伴って新聞掲載用に鎌田先生が書きおろしたものです。

鎌田紀彦
(NPO法人新住協代表理事・室蘭工業大学教授)

1947年、岩手県盛岡生まれ。東大工学部大学院博士課程修了。1978年から室蘭工業大学助教授、2004年同大学教授に就任。特定非営利活動法人(NPO法人)新木造住宅技術研究協議会(新住協)代表理事。