高断熱住宅の技術が実現したものは、暖かく快適で省エネな家だけではありません。関連する技術開発によって、床下から天井裏まで住宅を広く使える技術、自由な住宅デザインとプランニング、そして、木材が腐らない、百年の耐久性を持つ家が実現しています。

高断熱住宅は、単に断熱の技術にとどまらず、北海道の家造りに大きな可能性をもたらしました。

 新住協の活動を通して、高断熱住宅の普及のための、技術改良を続ける中で、多くの技術提案を行ってきました。ツーバイフォー工法の構成を取り入れた屋根断熱によって、天井の高い開放的な空間と天井裏利用を可能にし、基礎断熱によって、水道の凍結を防ぎ、夏の涼しさをもたらし、床下を設備空間として利用する床下暖房、グラスウールを使ったシロアリに強い基礎断熱工法、また、丈夫な雪止めと雨樋による、スガモレやツララを生じない無落雪三角屋根など、とてもここではすべてを説明できません。こうした技術をもとに、冬の長い北海道の住宅を、開放的でオープンな空間構成、フレキシブルで間取りの変更が容易にできる住宅プランニングなどが実現しつつあります。そして、何よりも重要なことは、住宅を造る土台、柱、梁などの木材が腐りにくくなったことです。人体に有害な薬剤も使う必要はないのです。こうした技術によって、北海道の住宅は、始めて百年の耐久性が可能になったのです。
 この技術は、多くの住宅メーカーや設計者にも取り入れられ、北海道の家を変えつつあります。しかし残念ながら、まだ多くはありません。これまでの住宅の常識が邪魔しているようです。

新住協は、百年住宅をテーマに開発研究を進めています。

 新築住宅では、建て主がその住宅に住み続けるのは30〜40年でしょう。百年住宅はその三倍の寿命を持つことになります。居住者が替わるときに、大規模な改修を施すなら、百年住宅だからといって高価な建材を使う必要はありません。百年住宅は普通のコストで建設可能です。大きなメリットは、30〜40年後にこの住宅が高く売買される可能性が高いことです。高く売れるためには、そのときの買い手が自分が住む家として魅力を感じるかどうかが鍵になります。つまり、建て主の自分たちだけの住宅から、誰もが魅力的に住める家。そのためにはどんなプランニング、どんな構成の家がよいのでしょうか。こうした家は、これからの日本の高齢化社会をくぐり抜けていかなければなりません。百年住宅のための新しい住宅のデザイン、これが新住協の今直面する大きな課題です。そして、建て主の皆さんとともに考えていきたいと思っています。

新住協では、百年住宅にふさわしい住宅の断熱性能を、研究してきました。

 百年先には、日本はどうなっているでしょうか。地球環境はどうでしょうか。そして私たちの住宅はどうなっているのでしょうか。とても想像できません。しかし、少なくとも、身近に起きつつある異常気象から、地球温暖化の進行を確実に感じ始めています。
 高断熱住宅によって、快適な住空間を手に入れた私たちですが、こうした家に住めるのは、世界の60億人のごく一部です。もっと少ないエネルギーで快適な生活を送れる家を、もっと少ない二酸化炭素の発生でそうした暮らしを実現すべきでしょう。北海道は、日本で一番暖房エネルギーが必要な地域にあるからこそ、日本中にそうした家を示して行く必要があると思います。
 私たちの研究室と、新住協はこうした家造りの研究をこの10年間続けてきました。断熱材を30〜40センチにすれば可能なことはわかっています。実験的にそのような家を建てることはいつでもできます。しかし私たちは、北海道のすべての家が実現できる手法を目指しています。太陽電池を屋根に乗せるには二百万円以上のお金がかかります。それよりはるかに少ない費用で、もっと大きな効果を達成したいのです。


昨年、旭川の新住協会員が七棟のモデルハウスを建設しました。百年住宅を目指した具体的な取り組みが始まっています。

コラム3回目---「これからの北海道の家としてQ1.0を提案します」
コラム2回目---「百年住宅を目指して」
コラム1回目---「新住協ってなに?」

鎌田紀彦
(NPO法人新住協代表理事・室蘭工業大学教授)

1947年、岩手県盛岡生まれ。東大工学部大学院博士課程修了。1978年から室蘭工業大学助教授、2004年同大学教授に就任。特定非営利活動法人(NPO法人)新木造住宅技術研究協議会(新住協)代表理事。