新住協は、正式名称を「新木造住宅技術研究協議会」といいます。昭和63年に、設立、工務店やハウスメーカーと大学などの研究機関との協力で、高断熱住宅の技術開発と普及を推進することを目的に設立されました。昨年NPO法人として新たな活動を始めています。

高断熱・高気密住宅という言葉は、新住協が創り出しました。

 年配の方々は、昭和48年に始まった「石油危機」を記憶されていると思います。灯油の値段は3倍近くに跳ね上がり、住宅を、灯油を節約しながら何とか暖かい家にしたいと、これまでの2〜3倍の厚さの断熱材を施工し始めました。しかし、その結果は何も変わらなかったばかりか、住宅の床や柱に使われている木材が急激に腐ることになってしまいました。私の研究室では、当時、大学構内に実験住宅を建て、実大の試験をしながらそのメカニズムを明らかにし、木造住宅の施工法に大幅な改良を加え、新しい住宅の工法として提案しました。ようやく北海道の住宅も、ヨーロッパや北米の住宅のように暖かく省エネな住宅が実現したのです。このような住宅を、「高断熱・高気密住宅」と名付け、この技術を設計事務所や工務店に普及し、さらなる技術開発を進めようと、関係の企業が集まってくれました。住宅の商売とは一線を画して、新住協(前身の新在協でしたが)の活動が始まりました。

新住協は、地場の工務店、設計事務所、ハウスメーカーが本当の家造りを目指して、研修を積み重ねる会です。

住宅業界は、競争の激しい業界です。大手のプレハブやハウスメーカーは日本の超大企業です。北海道の地場にも大手ハウスメーカーがあり、一方で地場の小さな工務店がたくさんあります。自動車や電気製品とは違うところです。しかし、こうした競争の中で、住宅は自動車と同じ「商品」になっています。住宅は「造る」ものではなく、「買う」ものになってしまいました。自動車は、買い換えるのは当たり前ですが、住宅はそうはいきません。

 大量生産すれば安くなるかといえば、プレハブ住宅の値段をみると、そうでもなさそうです。新住協では、住宅は買うものではなく、一軒一軒大工さんの手造りの家を、最新の技術を結集して作ることを目指して、地場の小さなハウスメーカー工務店が、日々勉強を続けています。地場の建設関係の悪徳業者が、マスコミを賑わしています。彼らにとって住宅は金儲けの対象でしかありません。しかし新住協の工務店にとって、家造りは生き甲斐であり自分たちの仕事なのです。

高い技術を持つ家造り集団として、これからの北海道の家造りを考え、新しい家造りを提案します。

 高断熱・高気密住宅に関連した色々な技術開発を続け、こうした技術をオープンに公開し、北海道のみならず日本全国に、普及活動を展開してきた結果、平成11年には国の次世代省エネ基準が制定され、その仕様の多くの部分が、私たちの技術が取り込まれています。大手のハウスメーカーやプレハブメーカーもようやく次世代基準対応の住宅が標準になってきました。それでも北海道の新築住宅の2軒に1軒はまだこうした性能を持っていません。既存住宅でいえば大半の住宅は「寒い家」です。こうした状況の中で、私たち新住協では、既存住宅のローコストな断熱改修工法を開発し実施し始めています。これから造る家に対しても、さらなる技術開発を続けてきました。

 折しも、世界的に原油高が続き、30年前の石油危機当時を上回る価格がこれから当分続くといわれています。地球温暖化は、はっきりと私たちの毎日の生活の中で実感できるほど進行しています。私たちは、これまでの研究成果をふまえ、住宅から生ずる二酸化炭素を大幅に減少させ、百年使える住宅を提案していきたいと考えます。こうした住宅を、皆さんに広く見ていただきたいと、昨年からプロジェクトを進めてきました。



「次世代基準対応住宅の暖房エネルギーを半分以下にする百年住宅」これが今回の私たちの提案です。

コラム3回目---「これからの北海道の家としてQ1.0を提案します」
コラム2回目---「百年住宅を目指して」
コラム1回目---「新住協ってなに?」

鎌田紀彦
(NPO法人新住協代表理事・室蘭工業大学教授)

1947年、岩手県盛岡生まれ。東大工学部大学院博士課程修了。1978年から室蘭工業大学助教授、2004年同大学教授に就任。特定非営利活動法人(NPO法人)新木造住宅技術研究協議会(新住協)代表理事。