鎌田紀彦の「家づくり常識のウソ」PART1
かつては常識とされたことも、今や事情が変わって常識とはいえない。
あるいは、もともと常識と思われていたこと自体がまちがいだった。
そんな、目からウロコの「家づくり・常識のウソ」を
室蘭工大の鎌田紀彦先生が指摘します。
まずは、新住協の活動を顧問である鎌田先生からご紹介いただきます。

新住協がしてきたこと

高断熱・高気密住宅の原型をつくる

 「石油危機」を憶えていますか。昭和48年に始まり、10年くらい続き、灯油の価格が30円/リットルから80円/リットルまで上昇し、世界中がパニックになりました。
 当時北海道では、何とか灯油を節約しようと、家を建てる人達は断熱材の厚さをそれまでの2倍から3倍にして施工しました。しかし、ほとんど灯油は減らないばかりか、数年で床下の木材が腐る被害まで発生してしまいました。今でも、昭和40年代末から50年代当時に建てられた家を改修しようとすると、多くの家で1階の床や柱が腐っています。
 私の研究室では、大学構内に実物大の実験住宅をつくり、いろいろな実験を繰り返し、その結果や解決法等を住宅業界の人達に提案しました。その詳細についてはここでは述べませんが、現在、木造住宅の多くは私達が提案した、通気層工法、高断熱・高気密工法で建てられるようになっています。

地場の工務店、建材メーカー、研究者が協力して工法を改良

 私達の提案は、木材を腐らせる原因となっていた壁内や床下、天井裏の結露を防ぎ、断熱材がきちんと効くようなつくり方をするというものですが、当時の標準的な断熱施工で、厚さを増やさなくても暖房範囲を家全体に拡大し、しかも灯油消費量は半分近くに減ってしまったために、業界では大きな関心が集まりました。
 こうした住宅のつくり方を、さらに改良し、普及させようと、昭和60年に「新在協」(新在来木造普及研究協議会)という組織がつくられました。地場の工務店、建材メーカー、そして私達研究者が協力して、新しい住宅の技術を研究開発しようとする会でした。その後、この会は「新住協」(新木造住宅技術研究協議会)と名を改め、いろいろな工法で住宅を建てる地場工務店を中心とする研修グループとなりました。自然と会員数も増え続け、現在では工務店・ハウスメーカー約550社、建材メーカー、販売店等約300社の大きな組織になっています。

正しい情報と新しい技術で本当の「家づくり」を続ける

 住宅業界や家を建てようとしている人達、あるいは、一戸建てに住んでいていろいろ改修を考えている人達に、大量の情報が供給されています。テレビのCM、新聞広告、チラシ、住宅関係の雑誌…。けれどもそれらを見ていると、あまりにもまちがった情報、ウソの情報にあふれていることを痛感します。
 私の目から見ると、こんな家は絶対建てるべきではない、こんな家を買ったら後悔するぞということが明らかな住宅がたくさん売れているようです。
 車なら買う前に試乗することもできますが、家はそうはいきません。
 住宅がいつのまにか「商品」になり、売ってしまったら後はもう知らないという世界になってきたのに対し、今年から、性能保証や性能表示をしていくことが始まります。しかし、例えば馬力だけでは車の良さはわからないのと同じように、家の良さ悪さを性能表示することは極めて難しいことです。
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 新住協は私達研究者と工務店・大工さん達とが、お互いに情報を交換し合いながら正しい情報と新しい技術によって、真に安くて良い住宅を供給するために、勉強と実践をしている組織です。もっと本音を言えば、地場の工務店が生き残りをかけて大手ハウスメーカーと戦い、「商品」ではない「家づくり」を続けていこうとする組織なのです。
 これまでユーザーの皆さんに向かって、表面に出て訴えかける活動は行ってきませんでした。今回、私達の活動の一端を本誌の協力を得て、4回のシリーズで紹介し、家づくりの常識が変わりつつある技術、常識のまちがいやウソを指摘してみたいと思います。

これまでは「黒子」に徹してきた新住協ですが、その研究活動を一般に役立ててもらおうと、 住まい手に向けたパンフレットを作り、情報発信を始めています。
パンフレット写真1 パンフレット写真2
パンフレット写真3
新住協(新木造住宅技術研究協議会)では、健全な住宅づくりのため、大学の研究機関、工務店、建材メーカーが一体となって活動を進めています。

柱の見える家をつくろう

20〜30年で建て替え。
 だから問題にされなかったいろいろなこと

 このごろの住宅は、展示場に行っても住宅雑誌を見ても、皆同じように見えませんか。少なくとも、石目模様のサイディング、屋根は三角屋根か無落雪、室内はちょっと傷がつくとすぐ中身の見えてしまう合板フロアに、壁・天井は石膏ボードにビニルクロス貼りの住宅がほとんどです。特に大手のメーカーの住宅は、そうした材料を駆使しながら、いかにカッコ良く見せるかを競い合っています。
 外装サイディングは、どんな模様をつけようが新しい時が一番きれいで、年々古びてみすぼらしくなります(10年くらいで塗り替えると色で出した模様は消えてしまいます)。室内のクロスはどんな模様や色を選んでも、所詮クロスでしかなく、インテリアとして平板になりますし、汚れて貼り替えようとすると意外にお金がかかってしまいます。何よりも、石膏ボードの表面の紙まではげてきますので、何回も貼り替えられるものではありません。これまでの住宅は、どうせ20〜30年で建て替えてきましたから、こうしたことはあまり問題視されなかったのですが、我々のつくる高断熱住宅は、木造の骨組は100年持つと思っています。

昔の良さをもちつつ、
 断熱・気密、耐震性に優れた真壁造の家が建てられる

 昔の住宅は柱の見える真壁(しんかべ)で、塗り壁で壁をつくり、しっくいやプラスターで仕上げ、古くなればなるほど白さが増すものでした。そういえば、北海道の家は昔から板貼りの大壁で柱は見えない家だったのですが、建材が工業製品化し、大壁造の住宅があたり前になったのは、日本全体で見ると戦後のことなのです。大壁でつくると、住宅はその構造が何なのか全く見えなくなってしまいます。鉄骨プレハブでも、ツーバイフォーでも、在来木造でも、住宅の内も外も同じに見えます。何かつまらないなと思う人は多いようです。
 真壁造の柱の見える家づくりを考えてみませんか? 木造の良さを感じることができます。壁が少し薄くなった分は、外側に断熱材を貼り増せば良いのです。そうすれば、柱や間柱の木部の外側にも断熱材がまわりますし、断熱材は今までより総厚で、厚くすることができます。北海道の住宅で大事な断熱・気密性も新しい技術でより高性能になり、在来木造の弱点とされた耐震性も合板をうまく使って、ツーバイフォーと同等に高めることができます。新しい技術が、昔ながらの伝統的なデザインを取りもどすことを可能にするのです。子供の成長を柱に印をつけることによって知る「たけくらべ」の家です。
 日本の住宅の伝統をふまえた、北海道らしいデザイン。まがいものの建材を使わず、木材と塗り壁で室内を構成する。外も柱梁の見えるデザイン。昔ながらでいて、新しい。そんなデザインが可能な技術は出来上がっています。

実験住宅の写真
浦和の家の写真
札幌の家の写真
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